大口の生命保険契約に潜む罠の見抜き方

大口の生命保険契約に潜む罠の見抜き方ということで、生命保険の胡散臭い詐欺的営業について触れていきます。生命保険等金融商品の不適正募集の背景や手口の続編であり、その補足といった感じです。

僕も金融関係の業界にいましたし、当然にそうした業界にたくさん友だちがいるため実際の営業方法を含め業界の情報がたくさん入ってきます。

生命保険等金融商品の不適正募集の背景や手口や無面接募集の生命保険契約を無効にするなどで生命保険に関する不適正募集、つまり不正営業、不適正営業について触れていましたが、それが現実となるように、最近某生命保険会社が不正営業問題で盛り上がっているようです。

今回世間を賑わせているのは、二重契約と無保険状態などが中心ですが、そのようなものはまだマシな方であり、生命保険を筆頭に金融商品の営業においてはもっとひどいものがたくさんあります。

意図的に隠しているのか、本当に知らないのかは知りませんが、ご意見番的な方々の見解は結構浅い部分ばかりだったりします。こう言っては失礼ですが素人に毛が生えた程度であり、実際の現場の実態は、金融商品を取り扱う内側にいた人たちでないとわからないというのが本当のところです。

「あえて二重契約と無保険状態という浅い部分だけで終わらせたいのかなぁ」ということすら思ってしまいます。

今回ご紹介するのは成績優秀で表彰されたりしている営業さんたちがよく使う手口であり、曖昧さをもって誤認させてなんぼの手口で被害額が大きいものです。特に特定の生命保険会社を限定するお話ではありません。

詐欺ではありませんが詐欺的営業と表現するにふさわしい契約形態です。

「怪しいなぁ」と思われた方は、一度保険証券等をご確認いただいて、そうした契約の意図自体をご家族で再確認してみてはいかがでしょうか。

こうしたことは他の記事でも若干触れていましたが、それらの内容に補足を加える注釈としての意味合いも込めて、今回は実際の数字を交えながら示してみます。まずは前提となる保険の特性について触れ、その後にそれを利用した悪徳営業について触れていきます。

養老保険の特性

一般的に生命保険や生命保険に付随する医療特約は、リスクへの備えというイメージが強いですが、いわゆる満期型の養老保険における満期保険金、終身保険の解約返戻金などの特性を見れば、貯蓄性のある保険もたくさんあることが見えてきます。

そしてそれら生命保険は基本的には月払いで保険料を納めるという感じになっていますが、年払いや全期前納払い、一括払いなどのたくさんの支払い方法があり、それぞれの「まとめ払い」のまとめ方の大きさによって割引が受けられたりします。

まずは養老保険の特性について預貯金との違いについて少しだけ触れていきます。

預貯金と養老保険

僕の年齢くらいだと、10年後に1000万円が受け取れる満期型の養老保険であれば、月の保険料は90000円くらいになります。

これは、10年間の間に死亡すれば1000万円の死亡保険金が入り、生きていれば10年後の満期日に1000万円の生存保険金が入るという保険です。

つまり、途中で死亡すればすぐに1000万円、生きていても満期日には1000万円という感じで、確実に1000万円を用意したい時に使う保険です。

預貯金の場合は、間で死亡してしまった場合は、貯めていた間の分しか貯まりませんが、養老保険の場合は死亡保険金で1000万円が受け取れます。これが預貯金と養老保険の特性の違いです。

生きていても満期日に1000万円が入るのだから、養老保険には貯蓄性があります。でもその分だけ月の保険料は高額になります。

養老保険ではなく、預貯金で貯めていった場合、10年間で1000万円貯めようと思うと、1000万を120ヶ月で割ることになるので、月当たり83333円ずつ貯めていくことになります。

養老保険の場合は、90000円です。そういうわけなので、この差額である90000円-83333円=6667円が生命保険料という感じになっています。間で死亡した場合はすぐに1000万円入るので、積立預貯金に生命保険がついているという感じです。料金は純粋な積立預貯金との差額という感じです。

生命保険料控除による節税効果を加味した実質掛け捨て額

で、先程の月の保険料90000円の養老保険ですが、月払いの保険料の総額を計算すると、1080万円になります。つまり80万円は保険料として掛け捨てることになるという感じになります。

節税効果は、その人の所得額によって変動しますが、まあ年間で2万円程度でしょう。なので10年間の節税効果は20万円となり、実質は60万円を掛け捨てることになるという感じです。

ということは年あたり6万円の掛け捨て、月当たり5000円の掛け捨て保険料ということになります。

預貯金+掛け捨て定期保険

まあ生命保険料控除によって多少の節税効果はあるので、そのまま預貯金との差額分だけ費用になるというわけではありませんが、僕の年齢で単なる掛け捨てである「定期保険」の10年ものでだと、死亡保険金1000万円であればネット系の保険会社で1400円くらいなので、そうした定期保険と通常の積立預貯金を組み合わせている方が計算上は合理的だったりもします。

月払いと全期前納払と一括払い

月払いの保険料の総額は1080万円でしたが、全期前納払というものを利用すると、割引が受けられたりします。

全期前納払は、「全期間の保険料を前もって預けておく」という感じです。用語上一括払いと同じに見えますが、一括払いとは異なるのでご注意ください。

全期前納払の場合は、もし間で死亡した場合、残りの期間の保険料の預かり分を返してもらえますが、一括払いの場合は返金されません。

単純に考えた場合、5年で死亡した場合は、全期前納払であれば、死亡保険金1000万円+残りの期間の保険料の預かり分500万円の合計1500万円が受け取れます。しかし一括払いにはその概念はありません。

また全期前納払は、預けているだけなので毎年の生命保険料控除の対象となりますが、一括払いはその年だけです。

一括払いのほうが割引率が高いですが、こうした落とし穴があるので注意が必要です。

で、先月払い保険料90000円の養老保険を全期前納払した場合、その保険会社のシミュレーションによると1050万円くらいの保険料になるようです。つまり月払いの保険料の総額より30万円ほど値引いてくれるという感じです。

ある程度の期間のまとめ払

また、全期間でなくても2年分とか5年分とかそうした感じでまとめ払をすることもできます。

こうしたまとめ払が詐欺的な養老保険の大口営業の手口に大きく関係しています。

養老保険の大口営業

こうした養老保険ももちろん基本的には年齢が若いほうが保険料が安くなります。

以前、不正営業について触れていた際には、保険契約者として高齢者を対象とし、被保険者を子や孫にするという手口について触れていました。

詐欺的な「成績優秀な人たち」は、言葉巧みに「お金に名前をつけておきましょう」とかなんとか言いながら、相続対策などと言いつつ「枠を作りましょう」と大口の契約をもらったりしています。

ではその手口について触れていきます。

数年後に満期となる養老保険の満期保険金や数年後に償還となる国債のお金をあてにする

まず、まとまったお金を持っている高齢者をピックアップします。そして既契約を調べたり、ご本人から聞き出したりして、その方の資産状況を調べます。養老保険の契約の有無と満期のタイミング、満期保険金の金額、国債の償還日や定期預貯金の有無などを可能な限り調べておきます。

そして、高齢者ご本人は健康状態や保険料の割高といった要因で対象とならないため、子や孫を被保険者(保険をかけられる人)とした契約を勧めます。

お金を持っているのは高齢者、保険に割安で入れるのはその子や孫といった構造になっています。

で、「成績が優秀だと表彰されたりしている悪徳営業の人たち」は、そうした家庭を調べて1000万円の養老保険などの大口契約を取りに行こうとします。

営業がいきなり1000万円などという話をする理由は簡単で、その方が一気に成績を稼げるからです。100万円の養老保険を10本契約するよりも、1000万円の契約1本の方が楽です。

お金の置きどころの問題です

「お金の置きどころの問題です」という感じで、費用を負担するわけではなく、お金に名義をつけるというような解釈に話をもっていきます。

「相続の時にもめないように」とか「被保険者との共同名義のお金」とか「お孫さんへの思いをここに記しましょう」という感じで、感情で説得したりします。

完全にアウトな話であれば、「あなたが亡くなった後はお孫さんのものになります」という感じで話をしたりもするようです。そこまでいかなくても「被保険者がお孫さんになっているのだから、相続人さんたちもそのお孫さんにあげるでしょう」というようなことを言ったりします。

で、先に示した養老保険の月払い料金や全期前納払の金額は、最近の低金利が影響して割高になっているため、掛け捨て費用が発生したりしていますが、高金利時代であれば、保険料総額が800万円で満期保険金が1000万円という感じでした。そうした高金利時代でなくとも、「トントン」になる程度の保険料だったので、まだそれほど損をせずに済む感じでした。

なので、今よりも昔のほうがこうした話は多かったと思います。

後に出てくるまとまったお金でまとめ払

で、いきなり大口の話をしても「一気に1000万円なんて厳しい」という感じになります。

なので、複数回のまとめ払を勧めるという感じで話を進めていきます。

「1000万円の枠を作りましょう」という感じで話を進め、支払いに関しては、最近満期になった養老保険の満期保険金300万円、2年後に満期になる養老保険の満期保険金200万円、その3年後に償還となる国債の300万円…といった感じで、合計で1000万円になるように話をもっていきます。

かなり大雑把な計算ですが、保険契約者側としては、なんとなく「1000万円の枠」に対して新規の負担はなく、次々に現れる満期保険金などで充当していけばいいんだという感じで納得したりしてしまいます。

「保険の設計書」には月払い保険料と、月払いの合計額が書いてあったりしますが、「これは月払いの場合なんで気にしないでください」などとごまかしたりしています。

支払い総額を計算してみよう

確かに単純計算で1000万円の枠に対して、300万円、200万円…と当てはめていけば、それで問題がなさそうですが、まとめ払のまとめる年数によって割引額は異なりますし、もちろん一番割引率が一番高いのは全期間のまとめ払です。

それを曖昧に数年の支払いに分割して、まとめて1000万円などと言いながら話を進めていきます。ここが罠です。

しかも割引率はその時の金利情勢などによって変動するので数年後のまとめ払に関しては、どれくらいの割引率かは確定していません。

現在の僕の年齢であれば全期間分を預けても1050万円払って10年後に1000万円なので、50万円分は掛け捨てであり、本来の意味での保険になります。

しかし、その手の悪徳営業は、保障はおまけでお金の置きどころという感じで話を進めています。

で、よくよく計算してみると1000万円以上の支払いをしているというケースがほとんどです。つまり単にお金の置きどころ云々という感じではなく、保障に関する料金を支払っていることになっていたりします。

そうしたことがばれないように、2年分の預かりだと言いながら実は1年11ヶ月分しか預かっていなかったりもするようです。

トータルで計算すると数十万円保険料を支払っていたということにならないように、よくよく保険証券を確認して、総支払額を計算してみてください。

実際には総支払額が1100万円になっていて、知らぬ間に100万円が保険代に消えているというケースもあるはずです。

本当に生命保険による保障を欲していたのならば良いですが、こうした契約形態はそんなことを目的とした契約とは思えません。

罠を見抜くために

こうした生命保険の罠を見抜くための方法として、まずひとつは保険証券に記載されている保険料(基本契約など)から総支払額を計算することです。

そして複数の保険証券がある場合は、それぞれの契約を図で表していつどのタイミングで保険が満期を迎え、どれくらいのお金がうけとれるのかとか、まとめ払をしている場合であれば、それぞれの契約において既にどれくらい支払いが済んでいるのか等を図で表して、現状を正確に把握することです。

何本も養老保険の契約があり、不自然に大口の契約がありという場合、支払い完了済みの契約や残りの支払金額の総額を割り出したりして、先に掲げたような手口に引っかかっていないかを調査してみてください。

実際のまとめ払の割引率等は年々変動しますが、以前は保険会社に問い合わせなければわからなかったものの、最近ではまとめ払の割引額を算出できるシミュレーションがインターネット上にあったりもするのでそういったものを利用して概算してみるのも良いでしょう。

その間は保障させていただいておりましたので

まあ、実際何を目的としてその生命保険を契約したのか、という感じになりますが、そのことを指摘したところで、「その間は保障させていただいておりましたので」などといいながらのらりくらり逃げていくでしょう。

「保険料負担が嫌なら残りの期間分全部を用意しろ」と言ってくるかもしれません。

実際に無面接募集の生命保険契約を無効にした際、相手側は最初解約扱いにしようとしてきたりしたので信用なりません。

おじいちゃんやおばあちゃんの愛情を利用する悪徳営業

この手の契約の厄介なところは、感情で契約をしたというケースが多いことです。自分の判断や行動を間違いだったと認めることには勇気がいります。そして特に愛情を示そうということで起こした行動を否定するというのは結構苦しいことです。

そういうわけで、そうした保険契約が出てきて契約者に指摘しても「もういいんだ」ということになりやすいという感じになっています。

しかし、いわば悪徳営業はそうしたことも見越して悪徳営業を行っているわけです。人の愛情を利用して詐欺的な営業を行っているという感じです。

まともな営業をしている人たちをカス扱いし、そうして得た営業手当で高級腕時計を買い、高級車を乗り回しています。

それを許すか許さないかは個々人の判断に任せますが、少なくともこれから先にこうした構造を持ったような話が出てきたときにはよくよく内容をチェックしてみてください。

契約内容によっては、無効扱いにすることもできるでしょう。迷った場合は弁護士さんなどに相談してみてください。

全ての元凶は、規模の大きさに比例して売上が必要になるという部分を無視して、ダウンサイジングせずにのうのうと経営を続けている保険会社のあり方であり、根本問題を棚上げして恫喝罵声でしのいでいる体育会系営業です。

まともにやればまともに成り立つようにするのが経営者の仕事だと思っています。

ご夫婦等々で築き上げてこられた大切な資産を、悪徳営業に奪われないような世の中になることを願っています。

Category:finance お金に関すること

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