効用からの誤った推論

守護霊が見えたから、やっぱり守護霊はいるんだ、というような事を本気で信じている人がいますが、そういうことはやめておいたほうがいいでしょう。

やめろといってもどうせそのままは聞き入れないことくらいはわかっていますから、やめておいたほうがいい、というふうに言っておきますが、それは存在を肯定しているわけではない、ということは断言しておきます。

「それを守護霊と呼ぼうが構わない」という類ではありません。「時にそれは魂や真我と呼ばれるが、その人には守護霊というふうに出てきた」というような類ではないということです。そんなものはありません、というと、「自分が実際に見たのだから、体感したのだから『ある、いる』」といって聞き入れないことはわかっています。ある、ないの二元論ではありません。

体感であり、現象であり、存在の証明にはならない

外に向かってあることの証明もできませんが、ないことの証明もできません。ただ自分の中では、現象としてそれを体感することはあるが、それは体感であり、現象であり、存在の証明にはならないということです。

それでも自分は体感しているのだからいいだろう、と思うことまでわかっています。体感は現実として受け取ったと思います。そう感じているのだから、確かにその通りです。

しかし、それを何かと関連させて考えているはずです。そういう体感自体は起こっても不思議ではありません。しかし、その体感から色々と勝手に思考を働かせている事実は直視してみましょう。

結果である現象からの原因の推論

すごく簡単な話ですが、「神の声が聞こえた」というのも、声は聴覚による情報です。鼓膜が空気振動に触れて、読み取って反応して、思考が言語の解釈から意識に意味付を行って、そこで起こったことを心が感じています。

空気の振動が起こっていないのに、声が聞こえるということは、鼓膜の反応をすっとばして脳が暴走してやっていることです。

そして最後に心で感じた、という現象自体は、スタート地点が鼓膜ではないだけで、いつもとあまり変わり無い出来事です。

急に鼻歌を歌い出すこととさして違いはありません。

その手前で何かを「信じよう」としたり、そのような情報を見聞きして、それが起こる以前にそのような思考の癖や心にインパクトがついたから、というのも一つの原因です。そういう原因なしにそのような声が出てくることはありません。

そういうことが起こった時にそれに意味付けを行います。そこで出てくるのがそういう胡散臭い「本当の自分」とかです。

一瞬の現象、一過性の体感への意味付けとしての妄想

確かにそれが起こったとしても、それは一瞬の現象にしか過ぎません。それ以上のことを「考え出す」のは妄想でしかありません。

ホラー映画を見たあとに、ホラー映画さながらの夢を見たりしますが、それはフィクションだとわかっているので気にしません。

しかし、そういった「一風変わった現象」「非日常の体感」などを味わった時に、それはただの一過性の体感だ、で終わりたいのですが、「何だったのだろう」という疑問が起こります。

そんな時にそういうことを解説しているスピリチュアル本などに出会った時に、その本の内容とその体感をつじつま合わせします。

そして、その一瞬の現象と関連された思考が「癖」になります。そこで、それが再現可能性を帯びてくるので「実体がある」というふうな確信をしていきます。

思考というか記憶が原因なのに、その原因を強化していくことになります。ただそんなものは、今この瞬間の因果関係をそのまま感じることができるようになるとバーンと破れます。

「恐怖心前提」の全ては「生存本能にやらされているだけ」

そういうものが出てきた時に「だからどうした」と、その場においていけばいいのに、何かと関連させて、揺るぎない「自分を守ってくれる普遍的な存在を把握したい」と思っています。

それは、「安心したいから」です。

それはアイツにやらされているだけ、「自分の意志でやった」と思っても、やらされているだけ、そう考えると全てが「やらされているだけ」です。満たしたつもりでも欲しくなる、また「やらされる」です。

安心したい、つまりは「恐怖心前提」の行動の全ては「生存本能にやらされているだけ」です。

腹が減ったというのも、腹が減らなければ、空腹の苦しみはありません。

満たされないと、イライラする、満たしても、また減って、欲しくなる。満たすために動かねばならない、結局全てやらされているだけです。

その事実がわかったら、そろそろ主従関係の逆転に入ろうではありませんか。

腹が減ったところでガソリンメーターに赤ランプがつくだけ、赤ランプがついても苦しくはありません。

効用からの誤った推論 曙光 37

「空」でありながら実在するかのように働く機能

Category:曙光(ニーチェ) / 第一書

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