業種柄、写真を生業にされている方ともよくお会いします。
僕は、音楽なら多少の目利きならぬ耳利きがありますが、写真のことは全くわかりません。
明らかにピンぼけしているとかはわかりますが、良し悪しがよくわかりません。
「アートと商業は別」など、いろいろ聞きますが、かなりの違和感が胸の中にあったので、一度、大勢の前でプロのカメラマンに質問したことがあります(カメラマン、カメラマンと言っていますが、ちなみに女性ならなんと呼べばいいのでしょうか?)。
「いまや携帯電話ですらかなりの画質になり、フィルターもアプリケーションでかけることができます。
一方、プロクラスのグレードとまではいきませんが、一眼なども昔に比べてかなり安価になり、いわゆる素人でも買えるような金額になりました。
編集ソフトも廉価版がたくさんあり、ある程度の加工が出来てしまいます。
また、大きな看板に使う写真なら別ですが、表示サイズを考えれば高解像度である必要はありません。
そんな時代にあって、プロのカメラマンに数万円単位で写真の依頼する価値とは、一体どういったものでしょうか?」
すると僕の隣にいた別業種の社長が言いました。
「相変わらずキツい質問しますね。どう答えるか楽しみですね」
すると、カメラマンの方は、表情を変えることなく、
「私は、商業用写真であれ、そこにストーリーを求めます」
一種の芸術家のような答えが返ってきました。
料理の写真なら、ただそこに料理があるだけでなく、目線だけでも作った人と出された人の目線があります、と。
ほう、奥が深そうですね。
「技術的な面などは、カメラを含めが機械がデジタル化されてから、かなりの補正を自動で行ってくれます。画質も格段に上がっているので、きれいな写真を撮ることは容易です」
ほう。
「ただ、一枚の静止画から、立体的に、また、時間の流れやその場の空間を感じ取っていただけるか、その奥に込められたストーリーを、私は写真に込めています。そこに付加価値を見出していただけるか、その点に尽きると思います」
「貴重なお言葉・ご回答ありがとうございました!」
ということで、会場は拍手の嵐に包まれました。
すると別の人が僕の耳元に近寄ってきてこっそり言いました。
「そっちに誘導するように先に技術的な言い訳を潰しましたね。あなたもなかなか役者ですね」
いやいや役者じゃない。何も演じていません。純粋な疑問だったのです。
そんな気持ちで仕事してる人は業種問わずかっこいいですね。
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