無面接募集の生命保険契約を無効にする

ご無沙汰しております。bossuです。

考えてみれば、「お金に関すること」カテゴリーの投稿は人気(?)にもかかわらず、最終投稿は1年半以上前になります。

まあそれほどお金に関心がなくなってきているのでしょう。でも一応元プロなので、ちょうど今あったばかりのトラブル、「無面接募集の生命保険契約を無効にする」ということについて、覚書程度に書いていきましょう。誰かの役に立つかもしれませんので。

満期保険金を受け取るシーン、つまり、養老保険保険が満期になった時に被保険者の生年月日証明などを求められる時があリます。

そんな時に、その保険が見に覚えのないようなものであれば、被保険者同意欄や告知欄などの代書による不適正募集として保険契約の無効を主張しましょう。

そうすることで掛け捨てとなっていた部分を含めた既払い保険料の全額が返ってきます。

保険契約の成立

保険って嫌なイメージがあるじゃないですか。あれは、とりあえず営業力だということで、保険契約をもらうことばかり考えていた保険会社の責任であって、保険自体はシステム的に結構いいものです。

で、保険の契約ですが、契約自体は保険の申込書と健康状態の告知書と第一回保険料の納付の三点セットで成立します。保険会社によっては告知ではなく健康診断が必要な場合もあります。が、たいていは健康状態の告知で済ませているでしょう。

あと付加要素としては生年月日の証明書ですね。

ではそれぞれ見てみましょう。

保険契約申込書

まあ民法を勉強した人ならご存知だと思いますが、契約というものは意思の合致で成立します。「申込」と「承諾」ですね。だからこそ契約書がなくても口頭とか、行動でも意思表示が合致すれば契約は成立します。

「行動でも?」

と思う人もいるでしょうが、わかりやすいのは、コンビニのレジです。別に口頭でやりとしなくても、売買契約が成り立っているじゃないですか。

レジに持っていったらそれが申込みか、と思う人もいるかもしれません。

でも理屈的には、商品を陳列している事自体が申込で、商品をレジに持っていくことが承諾みたいな感じです(意見が分かれるポイントですが概ねそんな解釈になっています)。

まあそれはさておき、申込と承諾があって「契約」は成り立っています。

でも、それは民法という一般法の原則なだけで、一部の分野ではプロ、素人の情報差とかがある場合に特別な規定を設けている場合があります。いわゆる特別法ですね。商法も消費者契約法も特別法です。

で、保険の契約でも当然に申込と承諾が必要になります。でも、契約が成立するためには、意思の合致だけでなく、他にも要素があるんです。

保険契約の場合には、第三者が登場することがあります。

契約者と被保険者

それは被保険者です。まあ保険の対象となる人です。

契約者と被保険者の違いは、「保険の契約をする人」と「保険をかけられる人」です。お母さんが息子に保険をかける、という場合がわかりやすいですね。

で、申込書なんですが、普通は契約の主体となる契約者と保険会社だけで終わらずに、被保険者が別にいる場合は3者で契約を取り交わすんです。

保険契約者A(母) 被保険者B(子)

死亡保険金受取人A(母) 満期保険金受取人A(母)

この場合は母Aが基本的な保険の契約を行うが、子Bの「同意」と「健康状態の告知」および「生年月日証明」が必要になる。よって母と子と保険会社(生命保険募集人)の3者で契約することになる。

いわば保険をかけられる人である「被保険者」が、「私に保険をかけてもいいですよ」と意思表示をしなければ、成立しません。被保険者の同意ですね。

もちろん保険契約者と被保険者が同じ場合もあります。夫が「自分が死んだ時に妻に保険金が入るように」と保険に加入する場合です。

このときは、保険契約者と被保険者が同じ人ですから、保険契約者と保険会社2者で成立します。

保険契約者A(夫) 被保険者A(夫)

死亡保険金受取人B(妻) 満期保険金受取人A(夫)

この場合は夫Aが単独ですべての契約のやり取りを行うことができる。よって夫と保険会社(生命保険募集人)の2者で契約が可能。

ここでややこしいのが、保険契約者と被保険者が異なるときです。

原則被保険者の自筆で同意欄の記入や健康状態の告知が必要になりますが、その場で同席などをしていない限り、一発で契約が成立しないので、契約者や生命保険募集人が被保険者欄を勝手に書いて契約を成立としているケースがよくあったそうです。だいたい2001年位までは、そんな感じの契約が多かったそうです。

告知書

また、保険契約には健康状態の告知が必要です。死亡率の高い病気を患っている人が、健康な人と同じ保険料で保険に加入できてしまうと、話がややこしくなりますから、ひとまずは、健康な人しか生命保険や医療特約に入れないことになっています。

「予防のために血圧の薬を飲んでいる」というケースではたいていアウトでしょう。

予防している方が死亡率が下がると考えますが、そもそも予防すらしなくていい人と同じように扱うわけにはいかないからです。

そんな感じで、保険契約の成立には、健康状態の告知が必要です。

「誰の?」となると、もちろん保険をかけられる人、被保険者です。

ここが無面接募集の無効のキーポイントです。

第一回保険料の納付

で、面白いのが、第一回保険料の納付をもって保険契約が成立するという点です。一般的な契約は、契約自体は意思の合致で成立して、あとは債権債務関係になります。

でも保険契約は、債務の履行である保険料の納付が無いと、契約自体は無効になります。

そういうわけで、「送金飛ばし」という手口で、上司を騙す成績のごまかしがあるそうです。

いわば、保険料の納付は後日送金で行うという契約パターンで、ひとまず契約書を持って返って上司を納得させるやり方です。

「今月の数字!今月の数字!」みたいな体育会系の恫喝なんかで、営業部隊を動かしているからそんなことになるんです。

でも上司も、嘘だと分かっているケースがほとんどです。でも黙認しているのは、上司もそのまた上司を騙さないと自分が怒られるからです。

売れないものは売れないとして、事実を受け入れる必要があります。

でないと良い商品とか、営業人員が多すぎるから規模を縮小しようとかいう考えが浮かんできません。人が多いと、その人達の人件費を賄うだけの売上が必要ですからね。

規模を縮小するということはネガティブでもマイナスでもないんです。いわば最適化です。でも、体育会系の恫喝でなんとかなると思っていると、その最適化は行われません。

生年月日の証明書

さて、付加要素の生年月日の証明書です。性別確認も要りますけどね。では、なぜそんなものがいるのか。

それは、年齢によって保険料が変わるからです。生命保険には、死亡保険と生存保険という概念があります。

いわゆる満期保険金というのは生存保険です。これは「その期日に生きていることが、保険金支払いのトリガー」という発想です。死亡保険金は「この期間に死亡したらそれが保険金支払いのトリガー」という発想です。

で、どっちにしても、いちおう若い人のほうが生きている確率が高いので、保険料は安くなります。

自己申告の年齢で保険契約を成立させてしまうと、養老保険なんかの生存保険金でお得になってしまうことがあります。

今はゼロ金利ですからあまり関係ないですが、昔は、総支払額が80万円でも満期の生存保険金が100万円になる時代もありました。その時代に、例えば被保険者の年齢を5歳若くしたら、総支払額が79万円で、満期時に100万円になることもあったのです。その時代に自己申告ではなくちゃんとした生年月日の証明が必要なことはよくよく分かる話です。

でも当時は契約自体がゆるゆるでした。生年月日の確認は、保険契約時ではなく、満期保険金受取とか死亡保険金受取のときでいいという事になっていました。

「お金が出ていく時に確認すればいいか」

という感じです。なぜなら、「免許書のコピーを下さい」といっても、家に複合機なんてない時代です。下手をするとコンビニすらあまりなかった時代です。

「めんどくさい」

そう思うでしょう。

で、そう思われたら契約がおじゃんになるかもしれない、そんなことを思った生命保険募集人たちは、「満期保険金受け取り時にまた確認させていただきます」という一言で、その手間を省くのでした。

ここも、無面接募集の保険契約を無効にするポイントです。

保険金の受取

保険金の受取は、保険金の受取人が行います。本人が本人にかけた保険の死亡保険金を除いて、養老保険(保険期間が満了となった時に生存保険金としてまとまったお金を受け取ることのできる保険)であればほとんどは保険契約者とイコールです。

でも、そのためには、保険契約を最後まで完璧にする必要があります。

というのは、契約は続いていましたが、生年月日証明などなど、実は完全に書類が揃っていないケースがよくあるからです。

でも、保険自体が満期を迎えるにあたって、契約自体が完璧だったかと言えば、被保険者の同意(「私に保険をかけてもいいですよ」という意思表示)や、健康状態の告知を本当に被保険者がしたのか、ということが争点になります。

無面接募集

ここで問題となるのが無面接募集です。

いわば、被保険者の同意や被保険者による健康状態の告知をパスして、勝手に保険契約者と保険会社の代理人である生命保険募集人が、保険契約を交わしたときです。

つまり、お母さんが、被保険者が息子の保険を、息子の同意や、息子直筆の健康状態の告知をさせずに、勝手に保険に入ってしまうケースです。小学生までは、お母さんの代筆でも大丈夫ですが、中学生になるともうダメです(12歳以上)。本人が直筆でサインしたり、健康状態の告知をする必要があります。

しかし、平日の昼間なんかに中高生の子供が家にいるはずがありません。たいてい学校に行っています。

でも、当時の生命保険募集人は、仕事が夕方まででした。

だからこそ、

「お母さんが代わりに書いても大丈夫ですよ」

とか

「じゃあ書いておきますね」

とか

質問をしながらチェックしているふりをして(そういう形式だと思わせて)、勝手に代書していたのが事実です。

ということは無権代理です。

無権代理

無権代理って字のごとくですけど、代理権のない人が、本人の代わりに本人に関する法律行為をすることです。

で、これって面白くて、基本的に無効なんですけど、本人が追認すると有効になるんです。(あと、表見代理って言うのがあって、相手が本人の代理人だと信じるに足りる理由なんかがあったりすると有効になるケースもあります)

例えば、自分名義で、知らない人が勝手に何かを契約してきたと(普通は疑いをかけられて契約できないですが…)。

で、基本的にそんなことが通用するわけないんですよ。自分ちの隣の人が、僕の名前で、高級羽毛布団の契約をして、それが成立するわけないんです。

でも、本人が追認すると有効なんです。

「あ、そうなの、じゃあ貰っておくわ」とその契約を認めると有効になるんです。

追認で有効に

ここが無面接募集の本来無効になる契約が有効になってしまう罠です。

先ほど、「生年月日証明」の話をしましたが、満期保険金受取の段になって、免許証とかのコピーなんかを求められる場合があります。

で、現在有効な免許証の原本提示とコピー提出何かをすると、追認してるみたいな構造になるんです。

「いままでは知らなかったけど、そうだったんだ。お母さんが満期保険金の受取に必要なら提示するよ」

ということは、無権代理を追認することになりかねません。

でも、保険会社は、「お受け取りに必要な書類です」としか言いません。

自分たちの代理人である生命保険募集人が行った、保険契約者にそそのかした無権代理を棚に上げて、そう言って盲目の追認をさせます。

で、保険金受取人が満期保険金を受けとったら、全てが無かったことなります。

「いやもう終わったことですから」

そういうのが目に浮かびます。

保険契約を無効にする

保険契約を無効にするということは、どういうことかというと、そもそもの契約自体が成立していないことにするという感じです。

初めの方で、保険契約が成立するための条件を少しお伝えしましたが、被保険者の同意や被保険者自身の健康状態の告知などが、保険契約の成立要件だったはずです。

でもその欄は、おそらく保険契約者か生命保険募集人が代書しているでしょう。

その代書された保険契約申込書や告知書の原本は、その保険契約が満期を迎えて消滅するまで保存されているはずです。

被保険者の生年月日証明を求められた時に、きちんと「私はそんな保険契約は知らない。同意した覚えはない」と言いましょう。

有効だというのなら原本を見せてみなさい、と。

保険契約無効の効果

では、保険契約を無効にすることで、どのようなメリットがあるのでしょうか?

それは、生命保険募集人に制裁を加えるというだけではありません。

契約自体が無効になる、ということは、全ての債権債務関係がリセットされるということです。

簡単に言うと、保険自体が成立していないので、保険料の支払いも無かったことになります。

でも、実際には支払っています。

ということは、保険契約を無効にすることで既払い保険料が全て返ってくることになります。(医療特約など、保険自体の利用歴があるとダメですが)

健康でいたならば、遡って「死亡保険」が無効になっても何の問題もありません。保険自体も無効になりますが、「保険料の支払い」も無効になります。

バブルの頃の高金利時代の保険なら、満期保険金の方が高いこともあるでしょうが、基本的に養老保険は医療特約などを合わせると、満期保険金でもらえる金額よりも、支払った保険料の総額のほうが高いはずです。

特に倍型と言われる、満期保険金よりも死亡保険金が数倍高く設定されているタイプは、死亡保険にかかる分の「掛け捨て部分」があります。医療特約などならほとんど完全に掛け捨てです。

つまり、養老保険の満期保険金をそのまま受け取るよりも、保険契約を無効にしたほうが、「掛け捨て部分の消費」が無効となり、既払い保険料の総額が返ってくるので、金額が大きくなります。

例えば、毎月5000円で、10年後の満期保険金は30万円の倍型養老保険だったとしましょう。

この場合、総支払保険料は、60万円です。

つまり30万円は、生命保険料や医療保険料として掛け捨てていたことになります。

無面接募集の保険契約を被保険者が追認し、満期保険金を受け取ってしまえば30万円ですが、「契約に同意した覚えも告知した覚えもない。無面接募集ですので無効です」とした場合は、総支払保険料の60万円が返ってきます。

誰が悪いのでしょうか?

それは、素人の甘い客だと考えて、正規の取扱をしなかった生命保険募集人です。

生命保険に関する知識の差があるから保険に関する特別法があるんです。

弁護士さんを使っても良いと思います。

もし被保険者(保険をかけられる人)として見に覚えのない契約が出てきたときには、一度調べてみましょう。

「数字だ!」と雄叫びをあげてきた、体育会系営業の末路です。

それで保険会社が潰れたとしても問題はありません。

こんなことがたくさん露見して潰れてしまうような会社は、そもそも存在していることのほうがおかしかったというのが本当のところなのですから。


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