法の履行

本来的に罰則規定のない努力義務規定というものは、民事的な賠償問題に発展した時に加味されるようなもので、特に「白い靴下しか履いてはいけない」というような義務教育の「校則」というものは、何の拘束力もないようなことです。

一応相談室に呼び出して、拘束し、指導することが「正当」になる根拠として置かれていますが、その「校則」自体の正当性はどこにもありません。

私立の学校なら、私立の学校法人が教育というサービスを提供するにあたり、その利用規約として定めている、というようなこともまかり通りますが、公立の中学校などではそれは理屈が不透明というか、どういう構図になっているのかわかりません。

事後解決と予防、そして第三の側面

法は、事後的な紛争解決と、もうひとつ、事の予防という効果を狙った側面があります。ただ、さらにもうひとつの側面はあまり語られません。

それは「文句を防ぐ、言い逃れできるようにしておく」です。

ブラック企業の例

「文句を防ぐ、言い逃れできるようにしておく」といってまずピンとくるのはブラック企業です。

ブラック企業の手法として、文句を防ぎつつ「あなたが悪い」という結論に持っていく傾向があります。

お金との天秤

よくあるのが労働関係の法律です。雇用条件に関して明らかに違反しているケースが結構ありますが、それを守っていない会社などがたくさんある理由は、違反してもたいして問題にならない、という点です。

法を守るよりも安い

簡単に言えば、罰金が安すぎることと、訴える人が少ないこと、そして数人が訴えてきて未払賃金+賠償金を払っても、まともに法律通りの勤務時間、有給休暇、最低賃金を守るより安いからです。

そして、賠償金などを払う場合でも、元々、ブラック環境で「従業員」が生み出したお金です。挙句現場の管理者などに責任を負わすので、結局腹は痛まず、やりたい放題です。

もちろん行政の取り締まりもそんなにきつくありません。人が少ないのですから、仕方ないでしょう。「仕方ない」と思わすのが「手」ですけどね。

文句を言えない人々

そして一応は法律があります。結構その存在自体はみんな知っていますが、上下関係があったり、最初にコーヒーなどを奢ってもらったり、知らないまま数年経過してしまったりしたら「知っていても言えない」という心理が働きます。

大企業でも有給休暇を一日も消化しないまま退職される方が結構いるようですが、そのような状況で、株主に利益剰余金を配当しているのは本来おかしな話です。

有給の消化

僕は、有給を一日残らず消化して退職しました。

最初、退職予定日までの残りの日数で消化しきれないため、現金だけでももらおうと思ったら、総務課が「それはできない」といってきました。

総務課は、「諦めてもらうしかない」と言ってきました。

僕は、「それはできない」と言ってやりました。

結局退職日をずらして、完全消化しました。

結局完全消化できたたわけですが、「諦めてもらうしかない」と僕に言った総務課を休憩室で「この人は詐欺師ですよー。みなさん騙されないでくださいねー。詐欺師の口車に乗らないでくださいねー」と、吹聴して回りました。

言い逃れの材料

そういうわけで、一応法律はあっても「あるのに言わないのはあなたですよね」という言い逃れの材料にだけなってしまいます。

「有給の申請をしないあなたの勝手ですよね?」ということになります。「いや、権利はあるんですよ。でもあなたがそれを行使しないだけですよね?」

というような構図になっています。

これは行政に相談機関があるにも関わらず、相談しなかったあなたが悪い、の構図です。

以前、労働基準監督署に手続きに行った時に、ちょうど隣のブースで相談員が相談の対応をしていました。

有給の取得についての相談だったようです。

すると、その相談員は「確かにそうなんですけど、職場での空気が悪くなるからやめといたほうがいいんじゃないですか?」と言いました。

いやいや、有給取得の申請で、職場の空気が悪くならないように、「行政の指導が入ったから、重い腰を上げざるを得ない」という状況にまで経営者を指導するのが仕事のはずです。

確かに動こうが、動くまいが、給料は変わらないのかもしれませんが、相談しに来た人を「諦めさせる」のが仕事ではないはずです。専門の相談機関がこの調子なら、あれらの法律は何のためにあるのでしょうか。

 法の履行 曙光 21


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