家庭の平和と魂の平和

われわれの普通の気分は、われわれが自分の環境を維持することのできる気分に依存している。 曙光 283

自分の環境を変化させる事こそ、「ひとまず今のままでも大丈夫なのに新しく危険なことをする必要はない」という抵抗感を一番感じる時です。家庭の平和と魂の平和という言葉のごとく、気分としての平和な状態を強く望んでいます。

確かに新しく危険なことをわざわざする必要はどこにもありません。

したいとも思わず、というのならばいいですが、心の何処かでは、「本当はやりたい」と思っているにもかかわらず、それを現実的に考えた時に出てくる煩雑さや障害に辟易している、というのがよくあるパターンです。

本当はやりたいくせにできない、その諦めの言い訳として、新しい環境を否定する、もしくは無価値という証明をする、という構図です。

純度100%で「やる必要がない」と思えればいいのですが、どうもそういうわけではない、といったようなパターンが多いでしょう。

今あるジリジリした苦しみのほうがマシだ、と思っているような状況です。

意図的に変化させる必要はありませんが、変化に対する抵抗感をいくら持とうとも、必ず変化していきます。

基本給と時間的猶予

会社勤めなどであれば、基本給というものがあり、ボーっとしていても会社は従業員に賃金や社会保険料、労働保険料といったお金を払わねばならない上に、株式会社等の法人であれば、存在しているだけで法人住民税などというものも発生し、嫌でもお金が出て行きます。株式会社の目的は、利潤の追求というものですから、ボーっとされて、利潤をもたらしてくれないというのは、明らかに目的に反することです。

しかし焦って失敗ばかりされて、結果がマイナスのものになる可能性も内在しているので、単に叱咤を繰り返せば良いというわけでもありません。また一方で、利潤の追求という目的上、失敗をすべて許容するということもできません。

ということで、会社としてはそれほど厳密には厳しくしたりしませんが、「いい加減に給料以上に利潤を上げてくれ」ということは常に思っています。

それは損益やキャッシュフローというお金という尺度があるからで、株式会社という存在の特性上仕方ないことです。

つまり、その資本主義の枠組にいる限り、与えられた猶予はお金で換算できるということになります。勤め先は無償の愛を注いでくれる存在ではありません。あくまで、労働力と賃金という取引ですから、お金を払って籍をおいていた学校とはかなり性質が違います。

動物との圧倒的な違い

さて、動物は、エネルギーを得るためくらいにしか動きません。人間社会ではそのエネルギーに該当するものが、金銭という換算になりそうですが、動物とは全然違った側面があります。

貨幣というものの機能もそのひとつですが、それは今回はさておいて、獲物獲得という側面での決定的な違いについて考えてみましょう。

動物は食物連鎖、天敵という概念がありますが、つまりは自分より弱い存在をエネルギー獲得の対象としています。

つまりアブラムシの天敵はナナホシテントウなどですが、ナナホシテントウとしては、アブラムシにやられないという「安心感」をもって、アブラムシに接近します。

自分より強いかもしれない相手に挑む

ところが、人間の営業マンは、自分より強いかもしれない存在にアタックしていくわけですから、嫌でも動物以上に緊張します。

当然です。

下手をすれば人間がトラに向かって挑みに行くようなものですから、倒す倒さないは別にして、「友だちになりましょう」と接するだけでも動物のそれとは全く異なります。

それほどのエネルギーを必要としていないのに、会社の命令で、そのようなことをしなければなりません。

別に営業マンに限ったことではありません。

どんな時でも初対面の人と合う時は、このような緊張感があります。

だからこそ相手を把握しないといけないという気持ちが起こり、安物の心理学特集などが組まれることになります。

その緊張感とは裏腹に、資本主義の特性上、金銭で期間的猶予や手法・行動が制限されることになります。

なるべくそういうものから離れていたいはずですが、そうはいきません。

それならば、そういった柵から抜け出すということをしなければなりませんが、その事自体が「新しい環境への変化」であり、今の環境にいるよりも瞬間的には恐ろしいことに感じてしまうはずです。

しかしその恐怖感は、自分の頭の中にしかありません。

柵も、恐怖感もすべて自分が作り出している霧のようなものだと気付けたなら、今の環境も、新しい環境もそのどちらにも抵抗感を感じることがなくなっていくでしょう。

家庭の平和と魂の平和 曙光 283

Category:曙光(ニーチェ) / 第四書

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