よく「流行ったら終わり」というのを聞きます。
すごくわかりやすいことです。
たとえば神奈川や東京で、一部の人たちが支持していたサーフブランドがあるとしましょう。
最初はそういう雑誌に載ったりして「おお!」と思われますが、ブランドが小規模、もしくは海外からの輸入数が少なくて等々の理由でみんなは手に入れることができません。
じゃあ、もっと欲しくなります。
それはそれでいいのですが、問題はそこから起こります。
短期的な儲けに走って、今までのお客さんを大事にすることなく、たくさん売ろうとしてしまいます。
そして、大型スーパーにすら卸してしまいます。
そうすると、一時的にすごく儲かりますが、そのうち大量の在庫を抱えることになり、大型スーパーの「広告の品」になってしまいます。
その時点で「安かったから」という理由で、おばさんが買います。
そして、およそファッションとは無関係な「近所のおじさん」が着て近所の商店街を歩くことになります。
これは想像するには容易な構図です。
サプライズへの予想
さて本題です。
誰かはわかりませんが「サプライズ」という言葉を流行らせました。
でも、演出というものは大昔から存在していたものです。
演出を用いて「相手にさらに喜んでもらおう」という、純粋な愛情表現ではないでしょうか。
その気持ちはおそらくいつの時代もどの土地でもあるでしょう。
しかし、せっかく意外性というものを用いて、感情の振れ幅を大きくしようとしているのに「もしかしたらサプライズがあるかもしれない」という予想を生み出してしまったため、相当安物になってしまいました。
でも、そんな時代になったからこそ、真価が問われる時です。
どうせなら泣いてもらうくらいの出来事を
昔、研修生だった頃です。
研修には2人の講師と1人の助手の方がいました。
「お世話になったので」ということで、研修終了時にみんなで少しずつお金を出しあってプレゼントを買うということになりました。
そして、研修最後の日、修了式を迎えたのでした。
すると、プレゼントは講師2人の分しかないのです。
幹事は1人ずつに1万円くらいするものを買っていたのです。
そして幹事は、他の研修生のすごい拍手の嵐の中プレゼントを贈りました。
その時の助手の方のさみしそうな背中を見て、僕は泣きそうになりました。
そして、僕は感情を抑えられずに、後で幹事にキレてしまったのです。
「あの人の分は?」
「え?別によくない?」
そんな答えが返ってきました。
僕は、もう話す気もなくしました。
そうしていると、別の同期が近寄ってきて
「やっぱりおかしいよな」
そう声をかけてくれました。
そうすると、やはり同じことを思っていた同期がたくさんいました。
「やっぱ幹事のあいつらおかしいよ。でも、とりかえしつかないよなぁ」
「いまさらあいつらにキレても仕方ないしな」
「どうする?」
―
研修終了後に近くのホテルでパーティーがあるようでした。
チャンスはそこしかありません。
パーティー開始まであと20分。
僕は講師の一人に聞きに行きました。
「パーティーには助手のあの人も来るんですよね?」
「いや、来ないよ。家も遠いから来ないみたいだね」
「『少しでいいから顔を出してください』と伝えておいてください!」
そう言い残して、僕と同期の数人は猛ダッシュで近くのお花屋さんを探すのでした。
研修生ごときが催しに遅れるわけにはいきません。
僕たちは走りました。
そして、運良く見つけることができて、急いで花束を用意してもらって、また、会場へと走るのでした。
―
パーティ会場にギリギリ間に合った僕たちはあたりを見渡しました。
でも、やはり助手の方はいませんでした。
先程の講師に聞きました。
「たぶんまだ資料室で仕事してるよ。さすがにもう終わってるかな。一応声かけたけど『いやぁ、私はいいですよ』とか言ってたぞ」
「今すぐ呼んでください!」
「おお、すまんすまん。。。」
気迫に負けたのでしょう。すぐに電話をかけてくれました。
「少しでいいから顔を出して、せめて一言でも残してから帰って欲しいんだが。。。」
それから20分くらいして助手の方は会場に来てくれました。
すると講師は察知してか、会場へアナウンスしてくれました。
「サプライズということで、研修生からプレゼントの贈呈です」
そして、僕は名前を呼ばれ、助手の方へ花束を渡しました。
サプライズという言葉が流行ってなかったら変に気遣いをされたかもしれません。
講師の方が、「サプライズですよ。サプライズ」と、相手の気を軽くする気遣いをしてくれました。
「妻が花が好きなので、持って帰ったら喜ぶと思います。こんなに大きいの持って電車に乗るの恥ずかしいな」
そういって、うっすら泣いていらっしゃったのを覚えています。
僕と同期はその方と固く握手をして、彼の帰りを見送るのでした。
安物になりかけていた「サプライズ」という言葉に救われた瞬間でした。
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