わかりやすい「おすすめ本」

「同じ経験はできませんが、どのような本を読んだら良いですか?」

メッセージのみならず、現実社会でもやはり会話の節々に出てくるような話題です。特に若い方で読書に慣れている方からはよく言われるご質問事項です。

ただ、あまりに「おすすめ本」と書いてしまうと、まるで胡散臭いアフィリエイターです。

彼らは「売ろう」と思って記事を書いていますが、売ろうとしているので純粋なレビューではありません。人のレビューを転載するような形で紹介しています。このサイトは、そういったタイプのものではない上に、もちろん広告も貼りません。

売れている本が良い本とは限りません。

ダイエット本ですらベストセラー本になるくらいですから、爆発的な人気の出た本というものは対象がB層であり、B層を釣れるようにうまく宣伝されたものが多いでしょう。

例えば、そのベストセラーが翌年から爆発的でなくても10年間とか20年間連続で、ある程度安定的にずっと売れているのならば良い本かもしれませんが、翌年にブックオフの100円コーナーの棚に何冊も並ぶような本は「話題本」だっただけで、それほど良い内容ではありません。

宣伝しなくても、ずっと売れていたり、ずっと読まれている本というものはたくさんあります。

例えば、岩波文庫を筆頭に、文庫になっている古典はもちろん良作揃いですが、それでは数が多すぎるので、もう少し絞って行こうと思います。

まずは基礎を固めましょう(日本語について)

僕も日本人ですが、日本語を本当に極めているわけではありません。国語学者で、辞書の編纂に関わるくらいの人ならば日本語を極めていると言っても良いかもしれませんが、そうでない場合はいくらきちっと勉強していても、大学を出た程度では、たいてい日本語をそれほど理解しているとは言いがたい、と勉強すれば勉強するほど実感するはずです。

ひとつは語彙の少なさ、もう一つは、きちっとした論理性を組み立てる能力です。

語彙については、旧字旧仮名までは触れなくても構いませんが、現代語でもわからない単語はたくさんあります。一生使わない単語もありますが、少し違うニュアンスの単語たちを知ることによって、曖昧に使っていた単語の意味をより限定的に捉えることができます。

これに関しては辞書を片手に読み進めていけば解決します。

もう一つの論理性ですが、こちらについて今まで読んだ中で、「分かりやすかったかなぁ」と思うもので役立ちそうなものは、

金田一 春彦氏 「日本語」

金田一 春彦氏の

日本語(上) (岩波新書)
ISBN-13: 978-4004300021
日本語(下) (岩波新書)
ISBN-13: 978-4004300038

大野 晋氏 「日本語練習帳」

大野 晋氏の

日本語練習帳 (岩波新書)
ISBN-13: 978-4004305965

野矢 茂樹氏 「論理トレーニング101題」

また、話が支離滅裂で自分の言葉の矛盾に鈍感な人には

野矢 茂樹氏の

論理トレーニング101題(産業図書)
ISBN-13: 978-4782801369

ニーチェはどんなものから読みましょうか?

別にニーチェを読む必要はどこにもないのですが、読むならば全部読んだほうが面白いのではないでしょうか。

彼の著書は、アフォリズム形式という短文の箴言が多いのですが、物によっては単にひとつの節だけでも面白かったりするものの、やはり彼の経歴を知らないと文の意味がわからなかったりするものがあります。

ただ、スキマ時間にちょろちょろ読んで楽しみながら、ということであれば、「曙光」や「人間的な、あまりに人間的な」あたりが面白く読めるのではないでしょうか。

ただ理解しようとするだけでなく、大喜利のお題を与えられた時のように、そんな格言たちをきっかけに思索を楽しんでも良いかもしれません。

ちなみに最初に手にした「人間的な、あまりに人間的な」は、阿部 六郎氏訳の古いもの(新潮文庫)だったので、読むのに少し苦労しました。この新潮文庫版の「人間的な、あまりに人間的な」ですが、アマゾンで見る限りは、何故か高値になっています。僕は大学近くの古本屋で100円位で買ったような記憶があります。

おそらくニーチェは恥ずかしがり屋ですから、遠回しに「察してよ」という表現をしてしまっているため、最初に「ツァラトゥストラはこう言った」を読んでしまうと、ただの面白くない物語の様に感じてしまうかもしれません。

ヘタな解説書よりも・・・

たいていずっとロングセラーになっているものには、それを解説したような本とか、それに関する意見を述べた本とか、はたまたそれを題材にしたマンガなどが出ています。

原典を翻訳されている方の「解説書」ならば、ある程度精度が高いので、読むと面白かったりしますが、たまに本当のトンチンカンが書いているような解説書もあるので要注意です。

概要を知るだけならば、ヘタな解説書の類よりも、受験勉強用の参考書だったり、大学で使われる教科書の方が理解はしやすかったりします。

最近では「わかりやすく」ということで、マンガになっていたりしますが、結局は書いている人がただ日本語訳を見て、あまり深く理解しないままに言葉だけ拾っていることも良くあります。

著者の学力というか、著者が原典をどこまで深く感じ取ったのかということが最大のポイントになります。

質の良い解説書

そういう意味では、ただ、一般的に「専門家」とされているというだけでは、信用はできません。

質の良い解説書に一発で出会える可能性は結構低いものです。

例えばスッタニパータについての解説をしている本はおそらくゴマンとあるはずです。新約聖書についても然りでしょう。

しかし、それは各宗派が各宗派の「こだわり」を大前提と置いてフィルタリングしているはずです。時に大きく解釈が異なることがあります。

それを念頭に置いて、解説書がたくさんあるような書物に関しては、一冊の解説書を盲信すること無く、ある程度は読み比べたほうが良いでしょう。もちろん原典を常に読むことが大前提です。

「偶像崇拝禁止」という旨を、どう解釈したら「偶像OK!拝めば治るよ!」になるのか今でも理解できません。

マンガや映画に注意!

そういったおカタイ解説書でも信用はできないものですが、それがマンガとなると、「売ろう!」という企画のもと、売れるように作られてとんでもない解釈が混じることがあります。

ただ、入り口を入りやすくしたほうが、いずれ原典にたどり着く可能性ももちろん上がります。しかし逆に、それでわかったつもりになり、「飽きて終わり」ということにもなりかねません。

ドグラ・マグラも、本来はテキストでしか表現できないはずですが、なぜか表現できるそうです。そういった場合は、要所が省かれているか、そもそも根本から解釈を間違っているかです。

「わかりやすいおすすめ本」への回答

やはり何かの原典を別の表現で、という場合は、原典を読解する能力が大きくその結果を左右します。

古典を漫画化したようなものはオススメしませんが、ただ手塚治虫氏だけは別格です。

手塚治虫氏の書かれた「ブッダ」はおすすめします。もちろん原典に忠実ではありませんが、どうせ感情移入するならマンガ「ブッダ」の中のシッダルタになってみることです。マンガですから「わかりやすく」、「読みやすい」にも関わらず、非常によい追体験になります。ぜひシッダルタになったつもりで、もがき苦しんでください。

「わかりやすいおすすめ本」への回答は、手塚治虫氏の「ブッダ」です。


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